ものがたりに栞をはさむ

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様々な「ものがたり」を楽しんで個人的な感想をのんびり書いていきます。好きな作品を誰かと分かち合えたらいいな。

映画 コーヒーが冷めないうちに

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9/21公開の映画「コーヒーが冷めないうちに」を観ました。

以下、感想です。

 

 


監督と脚本の過去作がとても自分好みだったこともあり、期待が大きかった。

 

4回泣けます、というキャッチフレーズ。

自らハードルを上げているのではと思ったが、このキャッチコピーに負けないほど何度も泣かされてしまった。

 

舞台となるカフェ「フニクリフニクラ」では、決められた席に座ると、店員の淹れたコーヒーが冷めるまでの間だけ過去に戻ることができる。

しかし過去に戻って何をしても現在の状況が変わることはない。

その点が一般的なタイムスリップものとは異なっている。

そのため、過去に戻ったからといって幸せになれるわけではなく、それではなんのために戻るのか疑問に思ってしまうが、そこがこの映画の見所である。

過去に戻りたいと思うのは、やり直したいことがあるから。

それはこの映画の登場人物たちにとっても同じこと。

変えたくても変えられない過去から戻ってきて、未来をどう生きるか。

それぞれの決意を観て泣かずにはいられなかった。

 

映画を観て感動して思い切り泣くと、観終えた後の満足感も大きいのでとても気分が良い。

泣くと言われたら泣きたくなくなる人も多いだろうが、この映画は泣かないと損である。

 

 

 

過去を変えられないというストーリーから、パラレルワールドのようなものかと思っていたが、そうではなかった。

状況は変わらなくても過去の一場面を変えていることに変わりはない。

そのおかげで未来の状況を変えることができるのだから、過去に戻ることに意味はあるのだ。

 

数/有村架純の儚げな感じがカフェの雰囲気にとてもよく合っていた。

初めは淡々としていて感情が見えないが、新谷くんと親しくなるにつれて彼女の考えや過去がわかるようになっていくのが嬉しかった。

 

波瑠が海外に行くかどうかを悩むシーンでは、ドラマでも同じような展開だったな…と思わずにはいられなかった。

また悩んでるのか!というのが率直な感想。

でも波瑠はこういうキャラが似合う。

 

認知症の妻を夫がいつも迎えにきていて、2人が夫婦であることも妻がそれを忘れてしまっていることも想像できる展開だったが、全て忘れても夫に病気のことをちゃんと伝えられなかったことだけが後悔として残っているなんて悲しすぎると思った。

過去に戻った先で、元気な妻に全てがバレてしまったシーンで、大丈夫だと笑う夫の姿に号泣してしまった。

 

妹や家族に対して意地を張っていたせいで取り返しのつかないことになってしまう常連客。

それまではずっと、未来から過去に戻ってきた人たちをカフェで見ながら他人事のようにしていた。

過去に戻るなんて興味ないと言わんばかりの態度だった。

それがかえって、やり直したい過去があるようにも見えていたが、結果的に「過去は変えられない」というルールを一番受け入れたくない状況になったのは彼女だった。

彼女は妹のための未来を選んですっきりしたようだった。

しかしこれは、「取り返しのつかないことをしてしまった」ということに思えた。

いつ人が死ぬかはわからないし、過去を変えることなどできないのだから死んでから後悔しても遅い。と受け取るのは間違っているだろうか。

 

幽霊が数の母親であることは途中からなんとなくわかっていた。

娘ならコーヒーが入れられるのではないか、母が戻ってこなかったのは父親に会いにいったからではないのではないか。というのは話の展開から予想できていたので意外性はなかった。

それなのに、ここまで感動してしまうとは思わなかった。

ストーリー展開と、俳優さんたちの演技が素晴らしすぎると思う。

ひとりひとりに感情移入してしまい、それぞれの人たちと同じ気持ちになって物語を観ていた。

4回どころではなく最後の方は泣きっぱなしだった。