つれづれ、北野坂探偵舎 著者には書けない物語(河野裕)
「つれづれ、北野坂探偵舎 著者には書けない物語」を読みました。
以下、感想です。
佐々波さんと雨坂さんの会話が常に編集者と作者の会話になっていくのがとても面白い。
ストーリーテラーは謎を解くのではなく、物語を紐解いていく。
彼一人ではきっと真相にはたどり着けず、編集者の助けがあって初めて物語が完成する。
そんな2人の関係が好き。
この2人を客観的に見ているユキの立場が羨ましい。
読み終えた後に幸せな気持ちになれる話。
最後まで読むと、副題の意味がわかり鳥肌が立った。
書かなかったのではなく、書けなかった。
結末が思いつかないだとか、描ききる前に死んだからとか、そんな理由ではなかった。
著者はどうしてもその結末を書くことができなくて、ファンに託した。
彼に書けなかったのはファンからの評価だったなんて、全く考えもしなかった。
そしてその物語を完成させたのは佐々波さんと雨坂さんではなく、著者のファンである鍵谷さんだった。
それを雨坂さんが語ったのだとしたら、本当の意味での完成にはならない。
話の展開が本当に上手いと思った。
雨坂さんはハッピーエンドになる話しか書かない。
それはわかっていても、ファンも著者も観客もみんなが幸せになれる結末が用意されていたのには驚いたし嬉しかった。